イリオスクスは、ジュラ紀のイギリスに生息していた小型の肉食恐竜です。ここではイリオスクスの基本的な情報から発見された場所と化石、特徴と分類、名前の由来などをご紹介します。
イリオスクスの基本情報
属名 | Iliosuchus |
種名(種小名) | I. incognitus |
分類 | 獣脚類 > テタヌラ科 > イリオスクス属 |
生息時代 | ジュラ紀中期(1億6920万年前~1億6440万年前) |
体長(推定) | 約2m |
体重(推定) | – |
生息地 | イギリス |
食性 | 肉食 |
イリオスクスの大きさ比較
イリオスクスの体長は約1.5メートルで、成人男性(約1.75メートル)よりやや小柄です。人の腰ほどの高さしかなく、恐竜としては非常に小型な部類に入ります。
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イリオスクスの概要
イリオスクスは、ジュラ紀中期(約1億6900万年前)にイングランドに生息していた小型の肉食恐竜です。体長は約1.5メートルと推定されており、発見されているのは腸骨のみです。その形状から、ティラノサウルス科に近い可能性も指摘されていますが、化石が不完全なため分類には不確定な部分が多く、「疑問名」とされることもあります。
イリオスクスが発見された場所と化石
イリオスクスの化石は、イングランド南部のオックスフォードシャー州にあるストーンズフィールド・スレートと呼ばれる地層から見つかりました。この地層はジュラ紀中期のバトン期(約1億6920万~1億6440万年前)にあたり、古くから多くの恐竜化石が発掘されている場所として知られています。
発見された化石は、腸骨と呼ばれる骨盤の一部で、全部で3つ確認されています。標本番号はBMNH R83、OUM J29780、OUM J28971と記録されており、このうちBMNH R83がホロタイプ(その種を代表する基準となる標本)として扱われています。1932年に古生物学者フリードリヒ・フォン・ヒューネによって命名されました。
ただ、発見されたのが腸骨のみであり、頭部や四肢、胴体など他の部位の化石が存在しないため、全体像を再現するのは困難です。そのため、イリオスクスの分類や生態に関しては仮説の域を出ず、断定的な情報は限られています。こうした背景から、さらなる化石の発見が強く望まれている恐竜のひとつです。
イリオスクスの特徴と分類
イリオスクスは、体長およそ1.5メートルほどの小型の肉食恐竜で、非常に小型で俊敏な獣脚類に分類されます。発見されたのは3つの腸骨のみで、これらの化石がこの恐竜に関するほぼ唯一の証拠となっています。
注目すべき特徴として、腸骨に見られる垂直の上寛骨臼隆起が挙げられます。これは、後の大型肉食恐竜であるティラノサウルス科の恐竜にも共通して見られる構造であり、進化的なつながりが示唆されています。このような骨の形状から、イリオスクスはテタヌラ類と呼ばれる獣脚類のグループに含まれると考えられています。
- 目 : 竜盤目 (Saurischia)
- 亜目 : 獣脚亜目 (Theropoda)
- 下目 : テタヌラ下目 (Tetanurae)
- 属 : †イリオスクス属 (Iliosuchus)
ただし、残された化石の情報が非常に限られているため、正確な分類には疑問が残ります。一部の研究者は、イリオスクスが他の恐竜と区別できない可能性を指摘しており、「疑問名(nomen dubium)」として扱うべきだとする意見もあります。つまり、正式な属として認めるにはさらなる証拠が必要なのです。
イリオスクスの名前の由来
イリオスクスという名前は、ギリシャ語とラテン語の要素を組み合わせて名付けられたもので「ワニの腰」を意味します。
「イリオ」は腸骨を意味し、発見された化石が腸骨だったことに由来します。そして「スクス(suchus)」は、古代ギリシャ語で「ワニの神」を表す言葉「Σοῦχος(スコウホス)」から来ており、外見的な特徴がワニを連想させたことが背景にあると考えられています。
種小名である「インコグニタス(incognitus)」は、ラテン語で「未知の」や「よく分かっていない」という意味を持ちます。これは、化石の情報が限られており、全体像や分類が不明瞭だったことを反映しています。このように、名前そのものが化石の希少性や当時の発見状況を物語っていると言えるでしょう。