ドレッドノータスは、白亜紀のアルゼンチンに生息していた草食恐竜です。ここではドレッドノータスの基本的な情報から特徴、発見された場所と化石、分類、名前の由来などをご紹介します。
ドレッドノータスの基本情報
属名 | Dreadnoughtus |
種名(種小名) | D. schrani |
分類 | 竜脚類 > ティタノサウルス類 |
生息時代 | 白亜紀後期(約7,000万年前) |
体長(推定) | 約26メートル |
体重(推定) | 約22~38トン |
生息地 | アルゼンチン |
食性 | 草食 |
ドレッドノータスの大きさイメージ
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ドレッドノータスの概要
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ドレッドノータスの特徴
ドレッドノータスは、白亜紀後期に生息していたティタノサウルス類の竜脚類で、全長約26メートル。肩の高さは約6メートル、首の長さは約11メートルに達し、体全体の半分近くを占め、前肢が非常に長いことも特徴的です。体重は研究者によって見解が分かれ、従来の推定では48〜49トンとされましたが、近年の体積モデル解析では22.1〜38.2トンという数字も提示されています。
保存状態の良さから、肩甲骨や上腕骨などの細部構造が明確にわかっており、筋肉の付着部位まで観察できます。特に尾椎や肩甲骨には固有の形状が見られ、これらは他のティタノサウルス類との識別に役立ちます。また、歩行はワイドゲージ姿勢と呼ばれる、脚を広げた安定感のあるスタイルだったと推定されています。
ドレッドノータスが発見された場所と化石
ドレッドノータスの化石は、アルゼンチン南部サンタクルス州のカンパニアン期からマーストリヒチアン期の地層で発見されました。2005年、古生物学者ケネス・ラコバラ氏らのチームが初めて化石を確認し、掘り出し作業には4年を要しました。現場は広範囲に骨が散らばっており、大型の骨を安全に搬出するためには人員や資材の確保が不可欠でした。その後、化石はフィラデルフィアへ運ばれ、3Dレーザースキャンによって詳細なデジタルモデルが作成されています。これにより、重すぎて直接扱いにくい骨も遠隔地で研究可能になりました。
発見場所:アルゼンチン サンタクルス州
ドレッドノータスの骨格は、他の巨大竜脚類と比較しても驚くほど保存状態が良好です。発見された骨は変形や風化が少なく、筋肉の付着部位や細部構造まで観察可能なレベルで残っています。骨格全体の完全性は45%以上、頭骨を除いた場合では約59%に達します。さらに、骨の種類ベースでの評価では70%以上が揃っており、この規模の恐竜としては異例の完全度です。これにより、形態学的な分析や復元研究が高い精度で行える貴重な標本となっています。

ドレッドノータスの名前の由来
属名「ドレッドノータス」は、英語の “dread”(恐れ)と “nought”(無い)を組み合わせた「恐れ知らず」を意味します。これは、成長した個体がその巨大さゆえに捕食者からほぼ無敵だったと考えられることに由来します。さらに、20世紀初頭に活躍した弩級戦艦「ドレッドノート」への敬意も込められており、発見地近くに関連する造船所があったことも命名理由の一つです。種小名「schrani」は、発掘プロジェクトを支援したアメリカの実業家アダム・シュラン氏への献名となっています。
ドレッドノータスの分類と古環境
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ドレッドノータスの分類と近縁種
ドレッドノータスは、竜脚形亜目の中でもティタノサウルス類に分類される大型草食恐竜です。発見当初は、比較的原始的な特徴と進化的な特徴をあわせ持つ「基盤的ティタノサウルス類」とされていました。しかし、その後の四肢骨の詳細な分析では、リトストロティア類の特徴を多く備えていることが判明し、特にアエオロサウルスやゴンドワナティタンとの近縁性が示されています。こうした位置づけは、今後の系統解析によってさらに修正される可能性があり、研究の進展が期待される分野です。
- 目 : 竜盤目 (Saurischia)
- 亜目 : 竜脚形亜目 (Sauropodomorpha)
- 下目 : 竜脚下目 (Sauropoda)
- 属 : ドレッドノータス属 (Dreadnoughtus)
生息した時代と環境
ドレッドノータスが生きていたのは、白亜紀後期のカンパニアン期からマーストリヒチアン期、約7,000万年前の南米パタゴニア地方です。この時代は、恐竜が多様化のピークを迎える一方で、白亜紀末の大量絶滅が迫っていた時期でもあります。生息地である現在のアルゼンチン南部は、当時は温暖で湿潤な気候に恵まれ、河川や氾濫原が広がっていました。その環境は豊富な植生を支え、大型草食恐竜にとって理想的な採食場所となっていました。
発見された地層からは、河川の氾濫や堤防の決壊による急速な堆積物が確認されています。このことは、ドレッドノータスが洪水などの自然災害に巻き込まれ、短時間で厚い泥に埋没した可能性を示しています。こうした急速な埋没が、骨格の変形や損傷を最小限に抑え、今日まで非常に高い完全性で化石が残された要因と考えられています。
他の巨大竜脚類との比較
ドレッドノータスは、アルゼンティノサウルスやパラリティタンなどの巨大竜脚類と並び称されますが、その完全性の高さでは群を抜いています。例えば、アルゼンティノサウルスの骨格完全度はわずか5%ほどに過ぎません。一方で、体重や全長の推定では、必ずしも最大級というわけではなく、推定値によっては他の種に及ばない場合もあります。つまり、ドレッドノータスは「最大級の恐竜」というより、「最もよく残された巨大恐竜」として学術的に大きな価値を持つ存在だと言えます。
名前 | 全長 | 体重 | 生息場所 | 標本の状態 |
---|---|---|---|---|
アルゼンティノサウルス | 30-35m | 60-80t | アルゼンチン | 部分骨格のみ |
パタゴティタン | 37m | 55-70t | アルゼンチン | 比較的多い |
ドレッドノータス | 26m | 22-49t | アルゼンチン | 非常に完全 |
パラリティタン | 26m以上 | 59t | エジプト | 部分骨格のみ |
スーパサウルス | 33-35m | 35-40t | アメリカ | 部分骨格のみ |
マメンチサウルス | 最大35m | 20-30t | 中国 | 首と胴部の骨格のみ |