19世紀初頭に最初の恐竜の化石が発見された当時、最初は「大きなトカゲの仲間」といった曖昧な位置づけだった恐竜ですが、1842年に”Dinosauria”(恐竜)というグループが用いられてから、「発見と修正の繰り返し」で恐竜研究は発展してきました。
そして現在では、恐竜は骨盤の形に基づいて大きく鳥盤類と竜盤類に分けられ区別されています。鳥盤類は植物食に適応した仲間が多く、竜盤類は肉食と草食の両方を含む幅広い系統を持ちます。さらに装盾類や角脚類、竜脚形類、獣脚類など様々な特徴毎に多様なカテゴリに分類されています。
ここでは恐竜の大まかな分類をなるべく分かりやすく解説します。なお、恐竜の分類には研究者によって様々な考え方があるため、ここでご紹介する分類が正解と言う訳ではなく、あくまで分類の一例となりますのでご注意ください。
恐竜分類の基本:大きく2つのグループ
鳥盤類(ちょうばんるい)とは?
鳥盤類とは、骨盤の形が鳥に似ていることから名付けられた恐竜のグループで、鳥盤目(ちょうばんもく)とも呼ばれます。骨盤の恥骨が後方に伸びている点が特徴で、この構造によって消化器官を大きくすることが可能になりました。
このため、多くの鳥盤類は植物を主食として進化しました。例えば、背中に板を持つステゴサウルスや、フリルと角で知られるトリケラトプスは代表的な例です。彼らは草食に適応した歯や顎の構造を持ち、大量の植物を食べることで生き延びてきました。
ただし、鳥盤類は「草食恐竜の代名詞」と思われがちですが、実際には一部の種が雑食であった可能性もあります。そのため、完全に「草食だけ」とは言い切れない点に注意が必要です。
竜盤類(りゅうばんるい)とは?
竜盤類とは、骨盤の形がトカゲ型に近い恐竜を指し、竜盤目とも呼ばれます。恥骨が前方に伸びているため、この名称が与えられました。一般的には肉食恐竜のイメージが強いですが、実際には下記の二つの系統に分かれます。
- 獣脚類:ティラノサウルスやヴェロキラプトルのような肉食恐竜の系統。
- 竜脚形類:ブラキオサウルスのような長い首を持つ巨大な草食恐竜の系統。
つまり竜盤類は、捕食者だけでなく巨大な草食恐竜も抱える非常に幅広いグループといえます。私であれば「肉食恐竜と草食恐竜の両方を生んだ母体」と表現します。ここに竜盤類の奥深さがあります。
「鳥盤類=草食」「竜盤類=肉食」ではない!
恐竜を学ぶとき、鳥盤類=草食、竜盤類=肉食と単純に考えてしまう人は少なくありません。しかし、この見方は誤解を生みやすいものです。
確かに鳥盤類は草食恐竜が中心ですが、必ずしも全てが草食であったとは限りません。雑食の可能性を示す化石も見つかっており、食性は多様でした。一方、竜盤類には肉食恐竜が多く含まれますが、同時にブラキオサウルスやディプロドクスのような巨大な草食恐竜も存在しました。
このように考えると、恐竜の分類は骨盤の形に基づくものであり、食性そのものを示すわけではありません。むしろ、「鳥盤類か竜盤類か」を知ることは進化の系統を理解するための鍵といえるでしょう。誤解を避けるためには、「骨盤の形による分類」と「食性による特徴」を分けて考えることが大切です。
装盾類(そうじゅんるい)
装盾類は、体を守るために鎧や棘といった防御装置を発達させた恐竜の仲間で、装盾亜目とも呼ばれます。特徴的なのは、全身を覆う骨質の装甲で、外敵からの攻撃に備えていた点です。こうした防御力は、同じ時代に生きた大型の肉食恐竜に対抗するために進化したと考えられています。
さらに、装盾類は、曲竜類と剣竜類に分類されます。
曲竜類(きょくりゅうるい)
曲竜類(曲竜下目)は、全身を頑丈な鎧で覆い、さらに尾の先端に大きなハンマーのような武器を持つ恐竜です。アンキロサウルスに代表されるこの仲間は、戦車のような体つきをしており、当時の肉食恐竜にとって簡単には手を出せない存在でした。
ただし、この防御と武器の進化は、動きの鈍さというデメリットも伴いました。俊敏さを失った結果、広い範囲を移動するのは不得意だったと考えられています。こうした特徴から、曲竜類は「守りと一撃」で生き残った恐竜といえるでしょう。
剣竜類(けんりゅうるい)
剣竜類(剣竜下目)は、背中に並ぶ大きな板や鋭い棘を持つ恐竜の仲間で、ステゴサウルスが代表的です。板は体温調節や仲間へのアピールに使われたとされ、背中を彩る特徴的なシルエットは他の恐竜と一線を画していました。
さらに、尾の先端には複数の棘があり、外敵に対する強力な武器となっていました。この武器は「スパイクテール」とも呼ばれ、攻撃を受けても反撃できる手段を備えていた点が注目されます。
ただ単に強そうに見えるだけでなく、防御と威嚇、そして生活に役立つ機能を併せ持っていたのが剣竜類の特徴です。
角脚類(かっきゃくるい)
角脚類は、頭部に角やフリルを持つ恐竜を含むグループで、角脚亜目とも呼ばれます。特徴的なのは、首の後ろに広がる骨質のフリルで、仲間へのアピールや捕食者からの防御に役立ったと考えられています。また、口の先にクチバシのような構造を持ち、植物をかじり取るのに適していました。
さらに、角脚類は下記の3つのグループに分類されます。角竜類と堅頭竜類を合わせて「周飾頭類」と分類する場合もあります。
鳥脚類(ちょうきゃくるい)
鳥脚類(鳥脚下目)は、イグアノドンに代表される二足歩行の草食恐竜です。大きなくちばしで植物を食べ、集団で行動する習性を持っていたと考えられています。歯はすり合わせることで効率的に植物をすりつぶす構造になっており、大量の餌を処理できる強みがありました。また、生活環境に適応して前足と後ろ足を使い分け、二足歩行と四足歩行を切り替える柔軟さも持っていました。社会性の高さから群れで生活したとされ、捕食者から身を守る工夫も発達していたのが特徴です。
角竜類(かくりゅうるい)
角竜類(角竜下目)は、トリケラトプスやスティラコサウルスのように立派な角と巨大なフリルを持つ恐竜のグループです。特に頭部の装飾が発達しており、外敵を威嚇したり仲間内で力を誇示する手段となっていました。前述の通り草食性で、低い位置に生える植物を食べるのに適した体つきをしていました。ただし、体が大きく動きは俊敏ではなかったため、角やフリルに頼る戦略を取っていたと考えられます。こうした特徴から「防御と誇示」を兼ね備えた恐竜として知られています。
堅頭竜類(けんとうりゅうるい)
堅頭竜類(堅頭竜下目)は、頭の骨が異常に厚く発達している恐竜の仲間です。代表的なものにパキケファロサウルスがあり、丸みを帯びたドーム状の頭蓋骨は10センチ以上の厚さを持っていたとされます。この頭をぶつけ合い、縄張り争いや繁殖行動に利用したと考えられています。また、敵に襲われた際には、頭突きで反撃する武器になった可能性もあります。ただし、実際に全力で頭をぶつけ合っていたかどうかは学説が分かれており、まだ研究途上です。派手さはないものの、ユニークな進化を遂げた恐竜群といえるでしょう。
竜脚形類(りゅうきゃくけいるい)
竜脚形類は、長い首としっかりした四肢を備えた草食恐竜のグループです。最大の特徴は、体の大きさに比して軽量化された骨格構造で、これにより巨体を支えながらも効率的に動けるようになっていました。群れで行動していたと考えられ、外敵に対しては体格そのものが防御力になっていました。
竜脚形類は、竜脚類と原竜脚類の2つに分類することができます。
竜脚類(りゅうきゃくるい)
竜脚類は、ブラキオサウルスやディプロドクスのような超大型恐竜を代表とする仲間です。首と尾が非常に長く、体長は30メートルを超える個体も存在しました。巨大な体は捕食者に対する強力な抑止力であり、体重そのものが最大の武器でした。彼らは四足歩行で安定した体勢を保ちながら、広い範囲の植物を食べることができました。また、群れをつくり集団で移動した痕跡も発見されています。ただし、大量の植物を消費するため環境への依存度が高く、食糧不足が生じると生息地を移動せざるを得なかったと推測されています。
原竜脚類(げんりゅうきゃくるい)
原竜脚類は、竜脚類に進化する前段階にあたる恐竜のグループで、プラテオサウルスなどが知られています。体の大きさは竜脚類ほどではなく、中型程度で二足歩行と四足歩行の両方を行っていたと考えられています。首は比較的長く、主に植物を食べていましたが、一部は雑食性の可能性も指摘されています。進化の過程で体格を大型化させ、のちに竜脚類へとつながる系統を築いた存在です。言ってしまえば、竜脚類の原型を示す重要な恐竜群であり、その多様な適応の痕跡は恐竜の進化を理解するうえで欠かせません。
獣脚類(じゅうきゃくるい)
獣脚類は、鋭い歯と爪を持ち、二足歩行で活動していた恐竜のグループです。最大の特徴は、肉食に特化した体の構造で、俊敏な動きと強力な噛む力を備えていました。ティラノサウルスやヴェロキラプトルといった有名な恐竜が含まれるため、恐竜と聞いて最初に思い浮かべるのはこの仲間だという人も多いでしょう。
ただし、獣脚類の全てが肉食だったわけではありません。進化の過程で雑食や草食へと適応した種類も存在し、その一部は現代の鳥類へとつながっていきました。つまり、現在私たちの身近にいる鳥は、獣脚類の生き残りとも言えるのです。
一方で、彼らの生存戦略にはリスクもありました。捕食者としての立場は食料に大きく依存し、獲物が減れば絶滅の危険が高まります。これを理解した上で見ると、獣脚類は攻撃的でありながらも環境に左右されやすい恐竜だったと考えられます。
まとめ:恐竜の分類・系統図
ここでは、恐竜の分類を骨盤の形に基づく大きな二系統(鳥盤類・竜盤類)とその下位分類について解説しました。
下記に「恐竜の分類・系統図」をまとめましたので参考にしてください。クリックすると拡大できます。
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