最も高価な恐竜化石ランキングTOP10|数十億円で落札された驚異の化石たち

恐竜の化石は、その種別、保存状態、希少性、完全度、そして細部の明瞭さといった多くの要因によってその価値が大きく変動し、時には数万ドルから数千万ドル(数億円~数十億円)に及ぶ価格で取引されることがあります。特に、ほぼ完全な骨格標本は、博物館だけでなく富裕層のコレクターにとっても非常に価値の高いものとされ、高額で落札される傾向にあります。

ここでは、史上最も高額で落札された恐竜化石をランキング形式で紹介します。

目次

恐竜化石が高額で取引される理由

結論から言えば、恐竜化石の価値はその希少性にあります。完全な骨格が残るケースはごく限られており、存在そのものが市場で特別な意味を持ちます。
このため、科学的・歴史的価値が高い標本は研究機関だけでなく博物館やコレクターから強い関心を集めます。さらに映画『ジュラシック・パーク』のような大衆文化の影響もあり、恐竜そのものが広く人気を得ている点も無視できません。
一方で、個人による所有は研究機会を失わせる恐れがあるため、学術界からは懸念も示されています。このように考えると、高額取引は夢とリスクの両面を持ち合わせているのです。

1位:エイペックス(ステゴサウルス)| 4,460万ドル

アメリカ自然史博物館に展示されているエイペックス

エイペックスは、米コロラド州のモリソン層で2022年5月に発見されたステゴサウルスの完全骨格です。

2024年7月10日に米ニューヨークのサザビーズで競売にかけられ、化石としては史上最高額を記録しました。約1億5,000万年前のジュラ紀後期のステゴサウルスの化石で、「エイペックス」と名付けられました。高さ約3.4メートル、全長約8メートルに及び、サザビーズによると「ほぼ完全骨格で、驚くほど保存状態が良い」とされています。特に、全体骨格の約70%の骨が残されており、背中の板状の骨を持つ装飾動物の骨格標本としては非常に珍しく、科学的にも重要だとされています。

ヘッジファンドのシタデル創業者で、フォーブス世界長者番付41位の富豪、ケン・グリフィン氏が落札しアメリカ自然史博物館に展示されています。

2位:スタン(ティラノサウルス)|3,180万ドル

クリスティーズで落札されたスタン(ティラノサウルス)

スタンは、1991年に古生物学者スタン・サクリソンによってサウスダコタ州で発掘されたティラノサウルスの化石です。

エイペックスの落札価格が更新されるまで、史上最高額を記録していたティラノサウルスの化石です。約6,700万年前の白亜紀後期に生息していたとされ、世界で最も完全な状態で残っている化石の一つと言われています。高さ約4メートル、全長約12メートルにもなる巨大な標本で、全身の約7割にあたる188本の骨と完全な頭骨が発見されています。

2020年のニューヨーク・クリスティーズのオークションで落札されました。当初、落札者の身元は不明でしたが、後にアラブ首長国連邦のアブダビ自然史博物館(2025年開館予定)であることが判明しています。

3位:ケラトサウルス|3,051万ドル

サザビーズで落札されたケラトサウルスの化石

1996 年にアメリカ・ワイオミング州のボーンキャビン採石場で発掘されたケラトサウルスの幼体の化石です。

ケラトサウルスは中生代ジュラ紀に生息した肉食恐竜で、細長い頭部と背中の突起が特徴的な存在です。ケラトサウルスは、化石自体が非常に貴重なもので、これを含めて過去に4体しか発見されていません。さらにこの骨格標本は、全長3.3メートル、高さ1.8メートルの驚異的とも言える保存状態で、ほぼ完全な状態の頭骨を含む139個の実物化石と復元のために追加された素材で構成されています。2025年7月に米サザビーズ・オークションに出品され3,051万ドルで落札されました。

4位:ヘクター(デイノニクス)|1,240万ドル

クリスティーズで落札されたヘクター(デイノニクス)

ヘクターは、アメリカのモンタナ州で2012年から2014年にかけて発掘されたデイノニクスの化石です。

映画「ジュラシック・パーク」に登場する人気恐竜、ヴェロキラプトルのモデルになったことで知られており、骨格は高さ約1.2メートル、鼻から尻尾の先まで約3メートルあります。これまでに発見されたデイノニクスの中で最も完全な骨格であり、約126個の骨が見つかっています。ヘクターの頭蓋骨は大部分が3Dプリンターなどを利用して復元されています。

落札後はデンマーク自然史博物館に展示されています。

5位:2体のアロサウルス|1060万ドル

クリスティーズで落札されたアロサウルス

アメリカ・ワイオミング州で発見された成体と幼体の2体のアロサウルスの化石です。

アロサウルスは、ジュラ紀後期のアメリカに生息していた大型肉食恐竜で、体長は8~12メートル。恐竜時代を象徴する代表的な頂点捕食者の一つとされています。この骨格標本は、成体は143個、幼体は135個の骨片と3Dプリンター等での復元により構成されています。

6位:スー(ティラノサウルス・レックス)|830万ドル

1990年にサウスダコタ州のシャイアン川インディアン居留地で古生物学者スーザン・ヘンドリクソンによって発見され、彼女にちなんで「スー」と名付けられました。

これまで発見されたティラノサウルスの化石の中で、最も完全度が高い(90%以上)標本の一つです。現在知られているティラノサウルスの標本の中でも保存状態が良く、史上2番目に大きい標本とされています。生前の全長は12.3メートル、体重は8.4トンから14トンと推定されています。

1997年のサザビーズの競売で、シカゴのフィールド自然史博物館が、マクドナルドやディズニーなどの企業スポンサーの支援を受けて落札しました。この化石は、競売にかけられ落札された初の恐竜化石でもあります。

7位:ビッグ・ジョン(トリケラトプス)|720万ドル

パリの展示会でのビッグ・ジョン(トリケラトプス)

ビッグ・ジョンは、2014年にアメリカのサウスダコタ州の牧場で発見されたトリケラトプスの化石です。

全長8メートルで、これまでに発見されたトリケラトプスの化石の中で最大級のものの一つです。復元された角の大きさは155cmで、ギネス記録にも認定されています。約6,600万年前の白亜紀後期に生息していたとされ、保存状態も極めて良好で、骨格の約60%が発見されています。頭蓋骨には戦いの傷跡と見られる穴があり、これが死因になった可能性も示唆されています。

元々は個人収集家が所有していましたが、2021年に売却され、現在はアメリカ・フロリダ州にあるグレイザー子供博物館に展示されています。

8位:バルカン(アパトサウルス)|640万ドル

パリのオークションに出品されたバルカン(アパトサウルス)

バルカンは、2018年にアメリカ・ワイオミング州で発見された草食恐竜アパトサウルスの化石です。

全長22メートルの巨大な化石は、全体の75~80%に及ぶ約300個の骨片と復元骨格で構成されている非常に優れた標本です。アパトサウルスはジュラ紀後期を代表する竜脚類で、長大な首と尾を持ち、全長は20メートル超。「バルカン」はその保存状態とサイズ感から、学術的価値と展示用としてのインパクトを兼ね備えていたため、多くの関心を集め、2024年11月にパリで開催されたオークションで640万ドルで落札されました。

9位:ゴルゴサウルス|610万ドル

サザビーズで落札されたゴルゴサウルス

ゴルゴサウルスは白亜紀後期の北アメリカに生息していたティラノサウルスの近縁種です。

この骨格標本は2018年にアメリカ・モモンタナ州チョトー郡のジュディス川の私有地で発掘されたものです。全長は約6.7メートル、高さ2.8メートル。頭蓋骨のサイズは97.8cm×67.3cm×43.2cm。79個の骨の化石と復元された追加素材で構成されています。ティラノサウルスよりは小型ですが、非常に獰猛な頂点捕食者の一つであり、骨格標本からもその迫力が十分に伝わってきます。

2022年7月にニューヨークで開催されたサザビーズオークションで610万ドルで落札されました。

10位:マキシマス(ティラノサウルス)|607万ドル

この化石は、2020年にアメリカ・サウスダコタ州の私有地で発見されたティラノサウルスの頭蓋骨です。

頭蓋骨のサイズは約133cm、重量は約84kg。骨は30個で、追加の鋳造部分に加え、様々な状態の歯が29本付属しています。約75%の完成度で、世界でもトップクラスの既知の標本の一つに数えられます。

2022年12月のサザビーズオークションに出品されました。頭蓋骨は恐竜の最も特徴的で象徴的な部位であるだけでなく、科学的観点からも最も重要な部位であることから非常に注目され、予想落札価格は1500万~2000万ドルとされていましたが、結果は予想を大きく下回る607万ドルでの落札となりました。

惜しくもランキング外の注目化石

ここで紹介しきれなかった化石の中にも、高額落札で注目を集めたものがあります。

トリニティ(ティラノサウルス) 620万ドル

3体のティラノサウルスの骨293個を組み合わせた複合骨格。(約50%の完成度)

ステゴサウルス 560万ドル

144個の化石骨片を含む部分骨格。2024年12月にクリスティーズオークションで落札。

アロサウルス 350万ドル

2016年にアメリカ・ワイオミング州で発見された骨格標本

これらはランキング外でありながら、市場の盛り上がりを象徴する存在と言えます。

まとめ

恐竜化石はロマンと投資の象徴であり続けています。記録的な落札額が相次ぎ、史上最高額は今後も更新されていくでしょう。
一方で、学術研究の停滞という懸念も残っています。科学と市場のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題になると言えます。

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